狐狸庵先生こと遠藤周作の著作が'73年のベストセラーに名を連ねた。ベストセラー4位の『ぐうたら人間学』は'72年の出版、6位の『ぐうたら愛情学』は本年、7位の『ぐうたら交友録』は、'68年に出版された『周作口談』の改題である。ベストセラーには届かなかったが、この年には『ぐうたら会話集』『ぐうたら怠談』も出している。
これらのシリーズは、「ぐうたら」を売りにしているが、わかりやすい文章のなかにキラリと光る、遠藤周作独自の洞察力と人間観に基づく文章を展開している。遠藤周作は、のちに北杜夫とともにインスタント・コーヒーのCMに出演し、「違いがわかる男」になっている。
『ぐうたら人間学』は狐狸庵先生の周りにいる編集者やファン、歴史上の人物などのおかしな人々の話を集めたエッセイ。『ぐうたら愛情学』は、男と女の間の深い秘密をしたためている。『私が棄てた女』や『沈黙』など、キリスト教や信仰を基調にした堅苦しい小説を書いていると、息抜きをしたくなるそうで、「ぐうたらシリーズ」には周作の肩の力を抜いた楽しさに充ちている。
ボクは同志社大学文学部文化学科の日本文学を専攻していた。大学では1回生からゼミがある。自分で教授を選べる訳ではなく、学生番号順に振り分けられたゼミである。ボクが当たったのは、若い先生で、グループを組んで何でもいいから本を選んで講釈をしろという。しかも、いちばん最初の講釈である。グループのほとんどは、女子高からの持ち上がりで、指定したミーティングにもこない。しょうがないから、遠藤周作の『沈黙』を選んで、ひとりで感想を書いた。すると、その教授曰く、「カトリックのことを調べたか」「作品の感想なんかどうでもいい」と説教が始まってしまった。
こちらは田舎から出てきたばかりで、右も左もわからない。文学の講釈など習ったこともなく、大学や文学について詳しく教えてもらったこともない。この教授の話を聞いていて、「バカじゃなかろか」と何度も思った。やり方も教えず(わからないなら聞けということだったのか)、いいかげんに内容を指定して、できたものが悪いと怒られる、こちらの方がたまったもんじゃない。
ボクが学校の講義を受ける気がなくなってしまったのは、70%ばかりは、このバカ教授に責任がある。ボクの怒りは今も残っているものの、バカ教授の名前は忘れてしまった。大柄でメガネをかけており、助手の女子大学生をバカにしていたことは覚えているのだが……。 |