「刑事コロンボ」は、'72年からNHKで放映された推理TV映画で、ボサボサの髪、しわしわのトレンチコートに葉巻たばこというユニークなキャラクターが、お茶の間で愛された。「うちのカミさんがね……」が口癖の、うだつのあがらなさそうな刑事が「あっ、もう一つだけ……」とするどい質問を投げかけてくる。そのギャップとユーモアが話題になり、ファンが増えていった。
完全犯罪をたくらむ犯人の隙のない犯行を最初にみせ、コロンボがわずかな手がかりから犯人のアリバイを崩していくかに焦点があてられたドラマである。犯人のほとんどが社会で成功を収めたセレブで、犯人の人物像も含め、コロンボと犯人との対決に興味をそそられるようにつくられている。
日本では制作順に放映されなかったが、アメリカでのコロンボの初登場は、'68年2月20日にアメリカのNBCから放映された「殺人処方箋」である。アメリカのテレビ業界では、シリーズ化される番組の検討用にパイロット版が製作される。これはそのパイロット版で、舞台劇をTV用にアレンジしたものだ。
NHKでコロンボがほぼ月1回放映される前に、ボクは「殺人処方箋」を見ている。資料を探すと、UHFで放送されたとある。当時、自宅でUHFを受信していたかどうか、その辺の記憶はあいまいだが、総合チャンネルでお昼の放送だったと思う。
「殺人処方箋」の犯人は、精神科医のレイ・フレミング(ジーク・バリー)だ。ジーン・バリーは'64年から日本テレビ系で放送された「バークにまかせろ」で人気のあった俳優で、その番組では大富豪の警部を演じている。
コロンボを演じるピーターフォークは当時41歳で、それ以前も大作映画のバイ・プレーヤーとして活躍していた。この「殺人処方箋」では、髪型もさほどボサボサではなくレインコートもヨレヨレではなかった。
ストーリーは、高名な精神科医が資産家の妻を殺し、患者であった愛人を替え玉に使ってアリバイ工作をする。完全犯罪をもくろんでいたのだが、妻がまだ生きていた。精神科医が家に戻るとコロンボ警部がいて「奥さんが強盗に襲われて意識不明の重態になった」と告げる。
コロンボは、高級マンションの最上階にある家に泥棒に入るのはリスクが高いと精神科医を疑っていた。コロンボのさまざまな疑問は、精神科医にはぐらかされてしまう。アリバイ工作を手伝った愛人は、良心の呵責に苛まれる。そのため、睡眠薬を飲んでしまったとコロンボに告げられた。「奥さんに続いて愛人も亡くなってしまうとは」と慰めるコロンボに、精神科医は「結婚するつもりはなく、事故で死んでも平気だ」とまで言ってしまう。すると背後から愛人の声がした。愛人の死は、コロンボは、愛人に精神科医の動機を聞かせるためのトラップだった。
コロンボは、番組の中で精神鑑定を受け「高い知性を持ちながら、うだつのあがらない格好を利用して罠を張る狡猾な男」だと診断される。人としてのモラルはともかく、犯人の精神科医は、専門分野でとても優秀だと思う。 |