子規の真実の姿を伝えたい
固定観念でガンじからめにされた子規像ではなく、自分のなすべき道を精一杯歩き、それでいて楽天的な彼の素顔を知ってもらいたい……。
特に、子規の食欲には凄まじいものがあります。
学生時代、常盤会からの支給金を食事に充ててグルメを気取った子規。食べる量を誇り、人よりどのくらい多く食べたかを自慢した子規。
不治の病といわれた結核に罹ってからも、子規は「滋養食」に目覚めます。病魔と死神からの攻撃に、栄養を取ることで自らの身体を健康に保ち、命を永らえたいと願う心が、「食欲」へと向かいました。
子規は、自分の人生の目標を文学に定めてから、古今の書物を漁って人に負けない知識を身につけました。そして、元気な頃には各地を旅行し、食べものを味わって、人の知らないことを体験。とめどない好奇心を充足させようと、知識と体験を食らい、すべてのものを貪欲に食い尽くそうとしたのです。
身体がカリエスに侵され、動くこともままならず、「病牀六尺」の空間に閉じ込められてからも、子規は「大食らい」でした。「ご馳走主義」を唱えて「滋養食」を食べ続けます。死の直前まで「食」に限りない執着を持ち、命をながらえる「滋養食」をとり続けたのでした。 |