歴史の中で、僕が一番興味があるのは、明治時代です。
開国によって、欧米の文化が急激に流入し、大変革の時代となりました。経済や行政機構、交通手段、教育、産業、ファッション、食に至るまで、日本人の生活は大きく様変わります。日本人は、こうした変化を受け入れ、日本にあったスタイルに変化させていくのが得意です。
和魂洋才の人々の中から、明治の文人たちが登場してきました。
江戸時代の戯作に飽き足らなくなった文人たちは、発展していく日本の中で、個人や自由といった欧米風の考え方を咀嚼し、発展する社会の中で葛藤する人々の心を描写し始めます。華美に装飾された文体を捨てた言文一致のリアルな文体で、写実主義・浪漫主義・自然主義・反自然主義などと掲げるテーマは異なりますが、これらの諸派が切磋琢磨して近代的文学を確立していきます。

漱石の作品群は、明治という新しい時代を迎えたインテリたちの苦悩を描写しています。
漱石は、明治という時代で傷ついた心を吐露しています。知力に優れ、妥協できない性格だからこそ、余計に傷ついた心の平安を求めてペンを走らせたと思います。
だから、抜群に面白いストーリーテラーでありながら、読後にどこか苦味を感じます。

僕は、そうした作品群の評価や分析は、文芸評論家の方々に任せて、漱石を取り巻く明治の食文化やファッション、温泉など、漱石の生活感や日常を皆さんに知っていただきたいと考えています。文豪としての漱石ではなく、人間・漱石の一面を記す琴で、広範な漱石の魅力の一部でも伝えられることができるのではないかと考えています。

わかりやすく、面白く、へそ曲がりで、変人で、偏食で、おたんちん。そんな複雑な漱石の魅力をエピソードや作品の描写からお伝えしたい。そんな気持ちで、漱石の本を出していきたいと思います。

文豪・夏目漱石の意外な面をリサーチする

明治を代表する作家・夏目漱石

明治から大正時代にかけて活躍した小説家・英文学者の夏目漱石。作品を読んだことがなくても、ほとんどの人がその名前を知っています。1000円札に肖像が描かれたり、『こころ』『夢十夜』『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『草枕』『三四郎』など多くの作品が国語の教科書に作品が採用されています。しかし、漱石がどのような人生を送っていたのかは、あまり知られていません。

小説を書き始めたのは意外と遅く、イギリス留学から帰国したからのこと。処女作の『吾輩は猫である』が『ホトトギス』に掲載されたのは38歳のときになります。『倫敦塔』や『坊っちゃん』『草枕』と立て続けに作品を発表し、作家としての地位を向上させていきました。

40歳のとき、漱石は帝国大学教授の地位を辞して朝日新聞社へ入社。本格的に職業作家としての道を歩み始めます。入社第一作目の『虞美人草』に始まり、『坑夫』『夢十夜』、前期三部作の『三四郎』『それから』『門』は大きな話題を呼びました。

43歳のとき、胃潰瘍を患い、転地療養のために修善寺温泉へ行きますが、そこで吐血して、生死の間を彷徨います。これが、いわゆる「修善寺の大患」で、なんとか命は助かりましたが、これから漱石は何度も胃病や痔疾、神経衰弱、糖尿病に苦しみました。

療養後、漱石は『彼岸過迄』『行人』『こころ』の後期三部作や、自伝小説『道草』を完成。大病後の作品で、近代知識人の内面を描きます。

49歳のとき、『明暗』執筆中に知人の結婚式に参加。そこで食べたピーナツのためか、胃潰瘍が再発して内出血を起こし、その短い生涯を閉じたのでした。

漱石は、日本近代文学の礎を築いた作家として知られています。当時の読者や後世の作家たちに、多大な影響を及ぼしました。

明治の文学

開国によって、日本には欧米の文化が急激に流入しました。そのため、日経済や行政機構、交通手段、教育、産業、ファッション、食に至るまで、日本人の生活は大きく様変わりました。

江戸時代の戯作に飽き足らなくなった文学者たちは、発展していく日本の中で、個人や自由といった欧米風の考え方を咀嚼し、発展する社会の中で葛藤する人々の心を描写し始めます。華美に装飾された文体を捨てた言文一致のリアルな文体で、近代的文学を確立していきます。

文学者たちの作品は、写実主義・浪漫主義・自然主義・反自然主義などと、作風によってテーマが異なりますが、これらの諸派が切磋琢磨して文学が確立していった時代でした。

漱石は、明治という新しい時代を迎えたインテリたちの苦悩を描写しています。明治という時代で傷ついた心を作品の中に吐露しています。知力の面では優れていながらも、周りと協調できない性格だからこそ、傷ついた心の平安を求めてペンを走らせました。抜群に面白いストーリーでありながら、読後にどこか苦味を感じさせるのは、そのあたりに理由があるようです。

僕が書きたい人間・漱石の魅力

漱石作品の評価や分析は文芸評論家の方々に任せ、漱石を取り巻く明治の食文化やファッション、温泉など、漱石の日常の物語を皆さんに知っていただきたいと僕は考えています。文豪としての漱石ではなく、人間・漱石の一面を記すことで、数多い漱石の魅力をわずかでもでもお伝えできるのではないかと考えています。

特に、僕は食分やファッションに興味があり、漱石の食べ物やファッションへの嗜好や傾向に関して調べると、とても興味深いエピソードがいっぱい出てきました。皆さんにあまり知られていないそれらを、電子書籍という形にしてお届けし体のです。

「漱石山房」で、毎週木曜日の面会日「木曜会」には、若い文学者たちが集まり、多くの著名な作家を排出しました。漱石と門人たち、友人たち、妻や家族との、さまざまなエピソードも面白さ満載です。

漱石作品を見ると、漱石は完璧な人生を標榜しているように考えられがちですが、実際の漱石は、「良き父」からはほど遠い人でした。へそ曲がりで、自分勝手で、変人で、悪態は日常的、暴言、暴力を加えることもあり、精神的にも苦悩を抱えていたのです。

そんな複雑で破天荒な漱石の性格を踏まえながら、数多くのエピソードをお伝えしたいと思います。